落雷

香港から帰りの飛行機が

離陸15分後に落雷にあった。


ハリウッド映画のような光景で

光は右の翼を迂回して地上へ落ちていった。

パーン!!という音とともに。


騒然となる機内の中で

これはマジで死ぬんじゃないだろうかと思い、

助かるには海か最寄りの空港に不時着してくれと

地面に落ちたら

痛いだろうか

即死じゃなかったらどのくらい痛みが続くだろうか

そんなことが頭を駆け巡った。


機内アナウンスは「今のところ異常なし」

でも飛行機が揺れるたびに心臓は止まりそうになった。



次の日には妹が引っ越してくる

親にも会える

晩飯もレンタカーも予約した

なんとか生き延びたい

本当に怖かった。



そんな中、あの人の事を思い出した。

あの人にまた会えるだろうか

あの人と一緒にお花見が出来るだろうか

あの人の笑顔を見ればきっと

心の底から「帰ってきた」と思えるだろう。

お土産を渡せるだろうか

じいちゃん、ばあちゃん、ひいばあちゃん、おじいちゃん

みんな今どう思う?俺、助かるかな?

結構頑張ってきたつもりだけど、

いろんな人を泣かせてしまったし

ダメでもしょうがないんかな?その辺、どう思う?

どうか3時間半後、羽田に無事に着陸しますように

まだ死にたくない、いつも口だけで「いつ死んでもいいように」なんて言ってたが

まだたくさんいろんなことして

いろんな人と笑いたい

どうかお願いします、と

目を閉じていた。




帰国した今

あの人のことを飛行機の中で思い出した事を思うのだ。

でもこれは

今はあの人には言わないでおこう。